本日は作業療法学科1年生「地域作業療法学演習」の授業をご紹介します。担当は作業療法士 机 里恵先生です。
この日の授業は、「集団療法」について学びました。人は一生を終えるまでの間に、学校や職場など、様々な「ひとの集まり(集団)」と「場」の中で生きています。集団療法は、この「ひとの集まり(集団)」と「場」の力を利用して行うリハビリテーションです。※1
先生と一緒に実際に行われている集団療法を体験し、セラピストとして参加者との関わり方や気をつけるべきことなど多くを学びます。そして最終的には限られた条件・環境の中で集団を構成し、レクリエーションプログラムを組んで行う力を身につけます。
本日は老人保健施設で行われている集団療法を体験しました。こんなプログラムになっています。
※1ひとと集団・場(三輪書店)はじまり(初版プロローグ)ⅶページより引用
【プログラム内容】
・オリエンテーション
・準備体操
・歌体操
・歌
・風船バレー
・ことわざゲーム
まずはオリエンテーションと準備体操です。利用者様が分りやすいように、聞き取りやすい声でゆっくりと順序立てて説明していきます。準備運動の際には、身体のどこを動かすのかジェスチャーなどを交えて伝えていました。
手指を使った歌体操は、午前中のまだぼんやりとした脳の働きを活発にする効果もあります。「1・2の3・4の、2の4の5...、」と言う先生の掛け声に合わせて指を動かしていきますが、集中しないと間違えてしまいます。
あれあれ?皆ちょっと違う...(苦笑)
準備運動も出来たところで、皆で歌を歌います。今日の歌は昭和23年岡 晴夫さんのヒット曲「憧れのハワイ航路」です。横リハ1年生は殆どの学生が知りませんでした(!)
「昭和20年(1945年)は何の年?」と聞いても、なかなか思いつく人はいません。だけど、老人保健施設の利用者様にとっては昭和20年も、「憧れのハワイ航路」もとても馴染み深い言葉でしょう。参加する方にとって分りやすくて、話しやすい話題を取り入れていくことも重要です。歌いやすいように歌詞にあった振付もついています。
さて次は風船バレーです。風船は可愛らしいハート型をしています。どこに飛んで行くか分らないので、利用者様の後ろでご家族が協力します。ここでは渡す相手の名前を呼び合いながら風船をパスしていきます。
ここで利用者様役とご家族役が交代します。次のグループでは風船バレーの代わりにことわざゲームをしました。床に並べられたのは、体に関わる漢字のカード。ご家族が持っているのは空欄のあることわざです。皆さん全部分かるかな?
利用者様同士でグループになってもらい、協力しながら全ての空欄を埋めていきます。
最後に先生による答え合わせをして終了です。
さて、利用者様とご家族、そしてセラピストが皆で集まって行ったこのレクリエーションにはどんな効果があるのでしょうか?そのいくつかを考えてみましょう。
1)参加者が希望を持てる
皆で一緒に体を動かしたり、歌を歌ったりすると自然と笑顔が生まれます。何らかの障がいで治療や援助を必要としている方とその家族にとって、楽しい会話や笑顔が生まれることによって「何だかやれそう」とポジティブになれる機会はとても大切です。
2)参加者が安心感を得られる
例えば、ハート型の風船は誰がやっても思った通りの方向には飛んで行きません。上手くやれないのは自分だけじゃなく、皆一緒なのです。こうした体験で、「どうして自分だけこんな目に...」と言う気持ちが、「自分だけじゃないんだ」と言う安心感に変わります。
3)人の役に立てる実感
何でも自分で出来ていたのに、今では家族や誰かの援助を必要とし、「自分は誰の役にも立てない...」と自身の価値を感じられなくなってしまう方も多くいます。だけど懐メロや昔の生活やそこから生まれた知恵や知識など、若い私たちが知らない多くのことを参加者は知っています。私達が参加者から沢山のことを教えて頂くと、その時参加者は自分が誰かの役に立ったという実感を得ることが出来ます。
他にも集団療法には様々な効果が考えられます。一方集団で行うリスクも想定し、セラピストはレクリエーション・プログラムを組んでいく必要があります。
参考文献:ひとと集団・場(三輪書店)
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